昭和の時代、手塚治虫をはじめ多くの著名な漫画家が若い頃に住んだトキワ荘。それを再現した豊島区運営の施設です。実際にあった場所からは少し離れた場所での再現ですが、バス通りに面しており、その通り沿いには関連施設もいくつかあります。街を歩いていると、あちこちに漫画のキャラクターがいたりして、漫画の街、という感じです。
ミュージアムの玄関を入って2階に上がると、廊下を挟んで両側に部屋が並んでいます。その扉を開けると、昔懐かしい押入れ付きの4畳半の畳の部屋です。当時住んでいたマンガ家の部屋を再現した部屋もあります。フロアには、共同の炊事場、トイレなど、当時の設備が再現されています。お風呂は近所の銭湯に行ったのでしょう。
木造二階建てで、今の賃貸アパートなどよりもはるかに、隣人との距離が近いです。ネタに詰まって思わず「うー!」なんて叫んだら、隣の部屋に聞こえるでしょうね。それを聴いて、あ、困ってるなと思いながらペンを走らせていたのでしょうか。お互い切磋琢磨しながら能力を磨いたのでしょう。時間が空けば、どこかの部屋に集まって飲み食いし夢を語り・・・なんていう光景が目に浮かびました。
マンガ家に限らず、当時の若者はこういう部屋に住んでいたんでしょうね。昔は、人と人との距離が近かった。
近くには、トキワ荘の住人たちが通っていた中華料理店もまだあります。せっかくなので、私もラーメンを食べてみましたが、こちらも昔ながらの醤油味です。ミュージアムのある通り自体も、なんとなく昔の雰囲気の残る住宅街で落ち着いています。
トキワ荘からそう遠くない、豊島区西部には昔、絵や彫刻を勉強する独身学生向けのアトリエ付きの借家がたくさんあり、アトリエ村と呼ばれていたそうです。そちらは昭和初期から戦前のことらしいですが、やはり、切磋琢磨しながら創作に打ち込んでいたようです。そして区境を超えて練馬区には、日大芸術学部があります。古くから芸術の育つ地域だったのかもしれません。